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保育研究レポート3

        学童ではどのようなルールが必要か

                       KMテクノソリューションズ 代表 南側晃一

 1.はじめに
 色々な学童施設でこどもたちの保育を経験して感じたことは、「このようなルールがなぜ必要か」ということです。大人の都合で様々なルールを作り、こどもたちを強制して、それを守れないとお説教するという指導が多いのには驚きます。そこで今回は、学童保育の実践に基づいて、学童として絶対に必要なルールは何か、考えてみたいと思います。

 2.宿題をしないと遊んではいけないの?
 「学童では、宿題をさせなければならない」と思い込んでいる指導員が多いように思います。また「宿題をしないと遊んではいけない」といったルールを設けている学童もあります。しかし、そのようなルールを設けなくても、こどもたちは「宿題をしなければならない」ことを十分に自覚しています。ですから、こどもたちは学校から帰ってくると、指導員が指示しなくても自ら進んで宿題を始めます。
 しかし時には、「今日はやる気がしない」など、宿題をしたくない時もあります。そのような時、こどもの気持ちを考えないで「宿題をしなかったら遊べないよ」と指示する指導員が沢山います。そのような対応により、そのこどもは益々ストレスを拡大し、イラついて指導員に反発します。
 ではなぜ指導員はそのような対応をするのでしょうか。その原因は「宿題をしないと遊んではいけない」といったルールを設けているからです。このようなルールを設けると、宿題をしないで遊んでいるこどもに対して、指導員は注意することが義務となります。このようなルールは無駄なルールであり、こどもたちの自主性を押さえつけるものです。このようなルールを設けてはいけません。
 本来、宿題をするか、しないかは、こどもが自分で考えて決めることです。指導員の役割は、こどもに宿題をさせることではなく、こどもの気持ちを受け止めて、こどもと一緒に考えることです。
 では、「宿題やる気がしない」とこどもが伝えてきた時、あなたはどうしますか。対応のあり方は一つではありませんが、一例として「今日は宿題やりたくないの?疲れたのかな?じゃあ、少し遊んでから宿題しようか」などと声掛けして、こどもの様子を見れば良いと思います。このような指導員の対応により、そのこどもは自分の気持ちを受け止めてもらえた事をよろこび、しばらく遊んだあと「じゃあ宿題するね」と自ら宿題を始めます。
 ただし、注意しなければならないのは毎日宿題をしないこどもへの対応です。「宿題しないの」などと声掛けすると、物を投げたり暴れたりするこどもにどのように対応するかが問題となります。このような場合は、無理に宿題をさせようとしない、「宿題をしなさい」などの指示をしないほうがいいでしょう。保護者の方や、学校の先生と話し合いながら、学童での対応のあり方を慎重に検討していく必要があります。

3.おやつは全員で食べなければならいの?
 それぞれの学童では、おやつの時間を決めていると思います。これは、おやつの時間だけではなく、外遊びの時間など、こどもたちが学童で生活する上で、いつ何をするのかをこどもたちが知っている必要があるからです。時間を決めることはルールではなく、こどもたちが見通しを立てて自主的に行動するために大切なことです。
 しかし、「おやつの時間になったら遊びや宿題をやめて全て片付ける」などのルールは必要でしょうか。全員一緒におやつにする学童があります。でも、1・2年生は5時間授業で学童に3時頃に帰ってきて、宿題をしたのち遊んでいます。3年生以上は6時間授業で帰ってくるのが4時頃になり、帰って来てすぐに宿題に取り掛かります。
 その時、「おやつの時間だから片付けてね」と指導員が指示します。しかし、なかなか片付けができません。指導員は何回も指示します。おやつ当番のこどもも「はやく片付けてね」と怒り出します。毎日、おやつの時間になるとみんなが殺気立っています。
 このような状況を生み出しているのは間違ったルールを設けているからです。集中して遊んでいるこどもたち、宿題を始めたこどもたちに対して、「片付けてね」という指示は、かなり無理があると思います。すぐに片付けができないのは「こどもの責任」ではなく、「学童のやり方」に問題があるのではないでしょうか。
 なぜみんなで一緒におやつを食べなければならないのでしょうか。「今、宿題してるから後で食べる」「今、遊びの途中だから後で食べる」といった、こどもの気持ちや考えは、無視されてもよいのでしょうか。大人の都合でルールを作り、こどもに強制することが正しいのでしょうか。今一度ルールのあり方を考える必要があると思います。

 4.学童で必要なルールは?
 すべての行動が、人間の道徳と倫理に基づいて行われるならば、ルールは必要ではありません。しかし、様々な個性を持つ人間社会のなかで、お互いに生活していく上ではルールが必要になります。しかし、無駄なルールを作ることで、こどもと指導員の間で、またこども同士で険悪な状況を生み出すことになります。
 そこで、学童において絶対に必要なルールは、@危険なことをしない、Aたたく・けるなどの暴力をしない、Bいやがることをしない・言わない、の3つです。この3つのルールは学童での基本でもあり、人が社会で生きていく上での基本となります。
 これら3つ以外のルールは必要ではありません。例えば、「部屋の中を走らない」というのはルールではなく「危険だから」です。このように、これら3つ以外はルール化しないで、問題が発生すればこどもたちとの話し合いで解決すべきです。

5.おわりに
 学童によっては、様々なルールを作って壁に張り出しています。しかし、なぜこのルールが必要か、そのルールはこどもたちに役立っているのか、という観点で見直しをする必要があります。こどもたちがルールに縛られるのではなく、自ら自主的に行動できるように支援すことが大切です。

以上