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保育研究レポート

     
     学童指導員の役割

                  KMテクノソリューションズ 代表 南側晃一 

 学童保育は、こどもたちの放課後での遊びの時間帯であり、こどもたちが集団での遊びを通して、自主性・協調性・社会性を学ぶ「こどもの世界」です。私たち指導員は、こどもたちの自主的な活動を見守り、支えていくことが大切です。そのことを前提とした指導員の基本的な役割は、以下のとおりです。

こどもたちの意見を尊重し、安心安全に過ごせる場を提供するとともに、
    異年齢集団としてのメリットを生かした仲間づくりを目指す

(1)基本的な生活ルール・生活リズムを身につけ、自ら主体的に行動できる自主性を育む

(2)言葉を大切にし、人を大切にする心を育む

(3)集団生活における協調性・社会性を養う

 ここに掲げた内容は、指導員としての児童保育に対する基本的な考えを示したものです。ここに示すキーワードについて説明します。

(1)こどもたちの意見を尊重する
 「こどもたちの意見を尊重」とは、学童保育は「こどもたちの放課後の遊びの時間」をお世話することが基本であり、まさに「こどもたちの世界」です。指導員がこどもに指示命令するのではなく、こどもたちの自由な考えを受けいれ、こどもたちの行動を見守り・支えることが重要です。

(2)安心安全に過ごせる場の提供
 「安心」とは、こどもたちが安心して学童に来ることができるということが大切です。「学童に行くといやなこと言われる」「学童にいくと怒られる」などといったことのないように、こどもたちが不安を感じない環境を作り出し、「学童に行きたい」と思えるような、穏やかで和やかで楽しい生活ができるように支援することを意味します。「安全」とは、こどもたちの出欠確認を徹底して「まちがいなく、自分のこどもは学童にいる」ということを保護者に保証することであり、特に出席予定のこどもが学童に来ない場合は、保護者との連絡確認を行い、こどもの安全を保護者と確認し合うことが重要となります。また活動中の児童の安全については、単に危険を取り除くのではなく、こどもが自ら危険を回避できる能力を身に着けるよう支援することが大切です。

(3) 異年齢集団のメリット
 「異年齢集団のメリット」とは、1年生から6年生までの児童が放課後を一緒に過ごすことで、低学年にとってはお兄ちゃん・お姉ちゃんに憧れ「私も出来るようなりたい」という思いで自主的・積極的な行動が生まれます。また、高学年にとっては低学年をお世話することでリーダーシップを発揮するなど、活動の中で責任感が芽生えます。

この基本的な役割のとに3つの具体的な行動のあり方を示しています。

(1)基本的な生活ルール
 「基本的な生活ルール」とは、こどもたちが学校から学童に帰ってくると、靴を靴箱に入れる、荷物をロッカーに入れる、手洗いをする、宿題をする、といった日常生活の流れを自然とできるようになることです。そしてその行為は「自ら主体的に」行えるようになることが大切です。ややもすると指導員が「ああしろ、こうしろ」と指示してしまうのですが、そこはグッと我慢して見守る必要があります。どうしても適切にできないこどもには「学童に帰ってきたら何をするか覚えてる?」などと問いかけて、こどもに考えさせることが大切です。

(2)言葉を大切にする
 「言葉を大切に」とは、こどもは表現力が未熟な部分がありますので、「きもい」「うざい」などといった不適切な言葉を軽い気持ちで単純に使うことがあります。言葉を使えるのは人間だけですので、その大切な言葉を正しく使うように説明しなければなりません。言葉を間違って使うと相手の心を傷つけるということを十分に理解させることが大切です。

(3)協調性・社会性を養う
 「協調性・社会性」は、集団での遊びのなかで、お互いに笑ったり、怒ったり、泣いたり、喧嘩したりしながら、相手のことを少しずつ理解し、集団における自分というものを見つけていけるように支援することです。

 では、指導員としての具体的な対応の方法について考えます。

(1)命令文ではなく疑問文で
 私たちは、ついついこどもたちに命令してしまいます。でも、命令は絶対にしてはいけません。命令は、こどもの自主性を奪い、自尊心を傷つけます。ですから、こどもへの声がけは「命令文」ではなく「疑問文」で行います。質問することで、こどもは自分で考えることになります。この時、特に注意すべきことは、笑顔で明るく優しく質問することです。怖い顔をして質問をすれば、それは命令となり、場合によっては脅迫になります。こどもとの「暖かい心の繋がり」を大切にしなければなりません。

(2)こどもの発言を否定しないで、こどもの心をそのまま受け止めて共感する
 指導員の質問に対して、こどもが自分で考えて答えを出した時は「なるほど」「すご〜い」「やるね〜」「それはいい考えだね」などと共感します。

(3)やるべきことが出来れば感謝する
 こどもが自分でできた時は、「ありがとう」「頑張ったね」などと感謝や励ましの気持ちを伝えましょう。

 さて、指導員としての具体的な対応の方法は、上記したように疑問文で問いかけることですが、質問の種類には5種類あると言われています。以下に示す5種類の質問方法のうち、@からCの質問は、こどもが深く考えずに答えられますが、D最高の質問は、こどもが自分と対話し、気づいたことを整理し、想像したりしなければ答えられない質問です。この「最高の質問」を重ねることで、こどもに自然と自分で考えるクセがついていきます。常に「こどもが自分で考える質問」を心がけてください。

【5種類の質問】

 疑  問 : 自分が知りたいことを尋ねる質問 : 「手を洗った?」「カバン持った?」
 ク イ ズ : 正解が決まっている質問、相手を試す質問 : 「お片付けしなくていいの?」
 命  令 : 行動を強いる質問 : 「もっとしっかり持ったほうがいいんじゃないの?」
 尋  問 : 言い訳しか生まない質問 : 「なんで食べないの?」
 最高の質問 : こどもが自分で考える質問 : 「どうやったら、うまくいくかな?」

 次に、指導員として行ってはならない行為(NG行為)について考えます。           

(1)勉強しているこどもに近づかない
 勉強しているこどもに指導員が近づくと、その子は指導員とお話をしたくなります。せっかく熱心に勉強しているのに、指導員が勉強の邪魔をしています。指導員は、勉強をしているこどもに近づかないで、遠くから見守って下さい。そして、こどもからヘルプがあれば、それに対応してあげて、できるだけ速やかにその場から離れください。

(2)遊んでいるこどもたちの輪に入らない
 こどもたちが遊んでいる所に首を突っ込む指導員がいます。これは、こどもたちの輪を壊す行為であり、指導員としては最低の行為です。指導員は、こどもたちの輪を作るのが仕事であり、すでに出来上がっている輪を壊すような行為をしてはいけません。

(3)ひとりのこどもと個別に遊ばない
 遊びの輪に入れないこどもがいます。このようなこどもは、指導員に甘えてきます。そのような場合、そのこどもとだけで遊ぶと、その子は他のこどもたちから隔離されてしまい、孤立します。そして指導員依存症となり、指導員としか遊べなくなります。このような場合は、「だれか一緒に遊ばない?」などの声掛けをして、こどもの輪を作り、その子を他のこどもたちに繋いであげなければなりません。指導員は、「こどもと遊ぶことが仕事ではない」ということを肝に銘じて下さい。

 最後に、児童保育を担当する指導員は、こどもたち全体の状況を常に確認しながら、@何をすべきかを考える(Plan)、A考えた内容を実行する(Do)、B実行した結果を考察する(Check)、C考察した内容を次の行動に活かす(Action)と言った、PDCAの管理のサイクルを回して、より良い児童保育を目指すことが大切です。

20242月)